失明
矯正手術の危険性が叫ばれたのは、50年代のサトウズ・オペレーション、80年代前半のRK手術など、前世代のことです。いずれも人の手で角膜にメスを入れる方法だったため、リスクが高く、角膜強度が落ちるなど後遺症の問題がありました。しかし80年代後半にコンピューター制御されたエキシマレーザーが導入されると、事情は一変します。それがPRK手術 (角膜上皮を剥離し、レーザーを照射し屈折を調整する方法) で、術後痛みがある、角膜上皮の再生を待つため治癒期間が長い、などの諸問題はあったものの、安全面では格段の進歩をみせました。
なぜならエキシマレーザーは、生体組織を1マイクロメートル (1000分の1ミリメートル) 単位で正確に切除することのできる精度があるうえ、衝撃波や熱の発生による組織破壊がありません。角膜実質層の一部分のみを削ることができるうえ、水晶体など奥の組織には一切影響を及ぼすことがなかったからです。こうしてエキシマレーザーの登場が屈折矯正手術の普及に道を開き、90年代後半に登場したのがレーシックです。
またPRKとは異なり、角膜上皮とボーマン層を温存するため感染症の危険が最小限に抑えられ、術後の痛みがほとんどなく、視力の安定も早いという特長があります。
レーシックは術後の合併症の可能性はあるものの、概して深刻なものではなく、それどころかPRKが抱えていた問題点の多くを払拭するものでした。
欧米ではすでに10年以上の実績があり、手術件数が世界中で年間150万を超えています。国内では失明の症例は報告されていません。
ただし非専門医による不適切な治療や、本来はレーシックに不適応の患者への手術などが行われているのも現実で、そのような場面ではリスクが跳ね上がることは言うまでもありません。言い換えれば、レーシックについてのトレーニングを積んだ眼科専門医 (角膜の専門医) が執刀する限り、現段階では失明の危険が限りなくゼロに近い手術法だと言ってもいいでしょう。その意味でもクリニック選びは慎重に行うことが大切です。